ESと人生
自分とは果たして何なのだろう。
などという哲学的な疑問は普通に生活していればおよそ抱かないだろうと思うのだが、私の場合はそれを就活中に幾度となく自身に投げかけることになった。
エントリーシートと履歴書は違う。
エントリーシートは、ただ経歴や志望動機を書けば良いのではなく、自身の経験や人間性、つまり人生を、限られた紙幅の中に落とし込まなければならない。
とはいえ、各企業のエントリーシートで問われる内容はそれほど大きくは違わない。
しかし、だからこそ起きる現象がある。学校教育の中で、誰しもが一度は経験したことのあるであろう、あの現象。
「ゲシュタルト崩壊」だ。
繰り返し同じ文字を書かされることで起きる、「これはなんだ?これは本当に合っているのか?」という混乱現象。
それが、ただの文字ではなく自分の人生であると考えてみてほしい。
人生について、同じような言葉で、同じような内容を綴る。
その中で生じる、「自分はなんだ?今、何を書いているんだ?」という混乱。
自分で自分がわからなくなる焦燥。
コピペすればいいのに、と思われるかもしれないが、私の場合は受けたほぼすべての企業で、手書きでの提出を求められたのだ。
運良く、書類選考では大体通っていたので良かったものの、人生の縮図ともいえるエントリーシートを提出し、その時点で志望企業から弾かれることが何度も起きていたら、早めに狂っていたのではないかと思う。
自分の人生と向き合い、時にそれに対して疑念や焦燥を抱きながらエントリーシートを作成する作業は、端的に言えばしんどい。
精神をゴリゴリ削られる。
SAN値が下がっていくのを感じる。
ひとつひとつ、丁寧に作成しているほど、ダメージは大きくなる。
エントリーシートは就活生の人生が詰まった書類だ。
各企業の採用担当の方々には、それを理解してほしい。そう軽々しく踏みにじり、破り捨てて良いものではないのだ。
そう思えば、サイレントお祈りなんてできないはずだ、そうでしょう?